Since:2000/4/21
なつのにおい
絵に描いたような夏雲の中、
僕は、学校のプールに行くんだ。
もちろん、学校の屋上に、オレンジの旗は立っていない。
コンクリのバリが残る渡り廊下を渡って
とびきり冷たいシャワーを浴びると、
ゴム帽子に頭を押し込めて、緑のプールサイドに急ぐ。
新鮮な水色が乱反射して、とっても旨そうだ。
プールサイドの上の、水たまりの熱せられた水の匂い。
波打つプールの、冷たい塩素の匂い。
ビート板の、ほころびたポリエステルの匂い。
競泳とかそういうのじゃなくて、
みんなと遊べる自由時間が好きだったな。
終業式
「あれ、ソフトクリームかなぁ」
「どれどれ、、、」
「あの、ホラ、あれ。。。」
「えー」
「あれさ、何に見える?」
「どれ、アレ? …なに?」
「…亀?」
「ぎゃははは…」
上履きを履き替える手前で、下駄箱の向かいの
大きな格子のガラス窓から、僕らは中庭越しの青空を見ている。
台風一過か、白い雲が次々と続いていた。
学校時代なんて、きっと沢山、いたずらに時間があって
何でもないことにそれなりな意味を持たせたりして、
そうして、よく遊んだものだ。
終業式が終わったら、次の式までず〜っと、途切れ目のない自由時間。
なんか気分ワクワクで、流れる雲を眺めていたんだろうな。
夕立
『きたきた、きたぁ〜!!』
路上教習の終盤、コワイ教官が突然叫びだした。
「なな、なんですか?」
「ホラ、あれ、、、」
指さしたフロントガラスの向こうには、真っ黒な雲が迫っていて、
そして遙か向こうから、土砂降りの雨幕が
こちらに向かって攻めてきている。
平日夕方の教習に緊張していて、そんなの気づかなかった。
「あ、窓閉めて、クーラー入れてくれる? 雨の時はかけていいんだ」
トライアスロンとか、そういう競技について熱く語る教官の中に
少年の心と大人社会をちょっとだけ垣間見た、晩梅雨の出来事。
---
(20歳の頃の思い出かなぁ)
ビニール傘
なんとなく手にしたビニール傘。
いつか、どこかのコンビニで買ったヤツだっけ。
明日も雨が降るかもしれないけど
こうして "もやもや" が続くかもしれないけど
チープで、向こう側が透けて見える分だけ
心無し、気持ちが晴れたりして。
---
(ぃゃぃゃ、単に安かっただけで。)