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ベルトコンベヤ
朝、いつものように駅に行くと、改良工事が始まっていた。
エアインパクトがコンクリを砕き、電車が来るたびホイッスルが鳴り、
その度に工事が中断する。
私は辛うじてオフピークなので、多分、客足が少なくなった今頃から
工事が開始なのだろう。
しかし、大変な作業だよな…
と、ぼんやりと視線を落とすと、作業シートの隙間から、"ベルトコンベヤ" が見えた。
最近では "廻るお寿司" でしか馴染みのない、それであるが、
正真正銘、本物の "土砂" を搬出するための、"ベルトコンベヤ" である。
私は、無性にコイツが好きなのだ。
何連にも連なったそれが、ゴリゴリモコモコとガラ土を運ぶ姿は、
子供心にずっと飽きなかった。
幼少時代、広がりゆくベットタウンで育った私には、
"ヂーゼルの巨大杭打ち機" と同様、興味の対象だったのかも知れない。
造成が一通り終了している最近の住宅地では、子供達はどんなものに
興味を示すのだろうか。
『いらっしゃいまポン』
CMというのは面白いもので、
ほんの僅かな時間の中で、様々な情報を私達に提供してくれる。
時として、それは商品だけでなく、
新しい生活スタイルや、概念を提案したり
はたまた、"あこがれの夢の世界" を見せてくれたり、
まず現実では起こらないであろうな、"おバカな事" を
やってくれたりして、楽しい。
TVCMのワンクールっていうのは、どのくらいの長さなのかは知らないけど、
予告無く始まる効果も手伝って、お目当てのCM期間中は、More Fun! である。
ちょっと昔の "JR東海 京都シリーズ" は、私の心にα波を与えてくれたっけ。
さて、時は 『ぽんず料理の店』 である。
Momoco世代のオトーサンには、重ね合わせた青春時代が蘇るだろうか。
「…なぁオマエ、今日は、"ぽんず料理" ってのがいいなぁ」
「あらアナタ、 "ぽんず料理" って、何?」
「え、無いのか? …てっきり今、そう言うのがあるんじゃないのかと……」
近所のスーパーで、若い夫婦のこんな会話が聞かれる…カナ?
※ このCM、東京地方だけの放送だったらゴメンナサイ
夕暮れ
夕暮れ時、買い物を済ませて帰宅の途中、
近所の小さな路地から、小学生の乗ったマウンテンバイクが、
垣根のコーナーを攻めて飛び出してきた。
その自転車は、僕をかすめて風のように去っていった。
「なんだよなぁ〜」と、思っているともう一台、
懸命に後を追って、同じ様に消えてゆく。
ははぁん。そうか、なるほどね。
夕暮れ時って、辺りが暗くなって、妙に "スピード感" が感じられるんだよね。
きっと彼らも、それに違いない。僕も、昔、"かけっこ" の競争したもん。
「夕方は悪いけど、オレ、早いよ」
「いや、俺だって早いね」
「よーし、じゃ競争やるか?」
…結局、第三者の "スターター役" がいなくて、
どっちが早かったのか、判らなかったんだけどね。
懐かしいナァ…。競争相手だった彼は、今頃、何をしているのだろう。
テネシーワルツ
ちょっと前に仕事の関係で、沖縄に出張した。
その時、現地でお世話になった方が、今度は東京にいらっしゃるとのことで
関係者各位で夕食を共にすることになった。
新橋駅前で落ち合い、銀座で、おいしいビールを飲んだ。
そしてその後、とあるラウンジに連れていって貰った。
初老のピアノマンがメロディを弾き、カウボーイハットのウッドベースがリズムを刻む。
ベルベットに身を包んだ歌い手が、知らない歌を歌っている。
全く、初めての体験だった。
一人、雰囲気に馴染めずにいると、常連らしき紳士がママに話しかける。
「ね、ママ、今日はめでたいんだ。 "テネシーワルツ" お願いね。」
「OK」
気さくで洒落た店内には、映画ぐらいでしか聴くことのない
優しいメロディが、静かに流れ始めた。
〜 こういう世界も、あるんだなぁ…
GWで、誰もいなくなった賃貸アパートで一人、
ラジオから、不意に流れたあの時のメロディに、
思わず耳を傾けた。
結局、ゴチになったんだよなぁ、何て事を考えながら…
水上バス
夕日が落ちた頃、水上バスに乗った。
船は、回転数を上げてレインボーブリッジをかすめ、
日の出桟橋に向かう。
そして、船の屋上デッキが解放され、少し寒い海風と、
いつもとは視点が違う水上からの夜景が楽しめる寸法である。
コンパクトカメラを持った小学生ぐらいの少年は、
夜景には少し早いレインボーブリッジを、嬉しそうにカメラに納めていた。
…きっと、この少年は、写真の出来上がりにショックを受けるんだろうなぁ。
…可哀想に (フラッシュを炊いたところで、夜景はうまく写らないのだ)
いや、哀れんではいけない。これもきっと、彼への試練なのだ。
などと、どうでも良いことを考えていると、船がチョット大きく揺れた。
すると、右舷前方一時の方向より、興奮した女性の声が聞こえる。
「こーんな(揺れな)んじゃないんだからぁ…メコン河はぁ…」
…う〜ん、水幅は別として、海と河を一緒にして貰ってもなぁ…
などと、一人ツッコミつつ思っていると、今度は五時の方向から、
「ホラ、水面に光が映ってさ。な? キレイだろ?」
隣の彼女に向けた、言葉のようである
しかし…アイツ、そんなセリフを吐くキャラの男じゃないよなぁ…
そんなこんなで、船上は、至る所で歓喜の声が上がっていた。
何が言いたいかというと…
私も、やっぱどこか興奮して、クルーズがとびっきり楽しかったって事。
註:水上市(または町)を走るバスの事ではありません。念のため。