Since:2000/4/21
鼻歌
人間の気持ちなんていい加減なモノで、
普段と変わっていないつもりでいても、結構気分が変動するものだ。
家に帰ったら、まず普通はTVをつけるところを、
今日に限ってはラジオだったり、無音の世界が良かったりする。
スタイニーが良かったところが、天然水のビールが良くなったり
コンビニ弁当が良くなったり、おにぎりにパンが良くなったり
新聞が良くなったり雑誌が良くなったり、ニュース番組がバラエティーになったり、
残業してトボトボ帰るのが、良くなったりする。
今日だって、散々な会社時間だったのに
寒い帰路を、一人鼻歌を歌って帰っている。
出前
母が電話を入れて、家族分を注文する。
ラーメンだと日曜の昼が多かった。
「ここにお金があるから、おじさん来たら貰って渡すのよ」
かなり待った後、無骨な自転車のスタンドの音を聞くと、
わくわく感は頂点に達する。
ドアを開けて迎れば良いのに、恥ずかしくてそのまま待ったりする。
「毎度あり〜」
ドンブリの "ラップ" を剥ぐ瞬間は二番目に好きだった。
三番目は、割り箸、かな。
−−−
今日ね、朝刊が来なかったんです。
で、夜に帰って来ても無かったんで、電話してみたんです。
すぐに持って来てくれたんですが、カブの音とかが凄く似てたから…
あずさ2号
小学校か中学校の頃。
白馬で旅館を営む父親の実家に、一人で出掛けた。
新宿から "特急あずさ号" に乗り、直通便が無かった時間帯だったので
松本から在来線(大糸線)の気動車に揺られた。
駅を出る度、ぶぁんと派手なクラクションを鳴らすのに驚いた。
訪れた目的はもう忘れてしまったが、一泊か二泊かして、
天文ドームでM57を見せて貰った気がする。
朝は、山の方から絶え間なく流れ出る雪解け水の
速い流れの水の音で目が覚める。
何で遊んだのかは覚えていないが、田んぼ、川、道ばた、山々、塩の道など、
見るもの全部が、のんびりとしていて新鮮だった。
帰りには、今で言うメロンパンぐらいのデカさのおにぎりを二つ貰って、
"あずさ" の中でほおばった。
電車の中で暖かいお茶の水筒を買ったけど、一個食べるのが精一杯だった。
ただ一つ、当時の流行歌でいう "あずさ2号" じゃないのが心残りの旅だった。
(追伸:ていうか、時期的には "コスモス街道" のネタの方が良かったかしらん?)
惑星ランデブー
ふと見上げると、知らない星空があった。
"こう何年も夜空を見ないと、星座の形も忘れちゃう物なのかナァ…"
寂しさに浸ろうと思ってもう一度良く見ると、
実はそこは "おうし座" であることに気付く。
明るい "惑星" が二つ、雄牛に寄り添っていて判らなくしているのだ。
色と明るさからして、木星と土星だろうか。
『あの明るいのが木星で、こっちが土星ね』
『ふーん』
自転車通学をしていた高校時代。
木枯らしの帰り道に自転車を止めて、僕らは星空を眺めた。
彼女を目の前にして、星座を惑わす惑星のように
僕の心が揺れていたのを覚えている。
『…ねぇ、寒いから帰ろうよ』
彼女のこの言葉、何故か暖かく感じたりして。