ワンダーエッグが、最後の営業を終える日である。
徐々に知った顔が集まり、楽しそうに会話をする。懐かしい。
あどけなさの残る少年少女達は、れっきとした大人になっていた。
何年振りかに話しているのに、少し話をすると、まるっきりあの頃と変わらない。
さっき仕事が終わって、みんなでインパークしているようだ。
もう、二度と開くことはない。
もう、いいんだよ。
君は、その仕事は終わったんだ。
その場所への、エネルギー供給は、あと少しで終わろうとしている。
アトラクターが、帽子をとって、僕らの方を向いた。
「ワンダーエッグ、最高ー!!」
何かが、こみ上げる。
ロスタイム。閉園時間は過ぎている。
アトラクターアーチも、我々を待っている。
誰かが言った。
「踊ろうぜ」
自分は、自分から隣人の手を取って、初めてその輪の中に加わった。
「ここ昔、"二子玉川園"っていう遊園地があったんだよ。行ったことある?」「あそこの駐車場に、おじさんがいるでしょ?
あの人たちはね、昔、ボクたちと一緒に、遊園地のおもりをしていた人たちなんだよ」ちょっと前、ライドのオーバーホールをした時、点検の人が教えてくれた。
あたたかく、やさしい顔で、腕を大きく上げて作業車を迎えてくれる。
おじさんの、初めて見る表情だった。
時代は繰り返され、
思い出は、心の中に生きていく。きっと、そういうことなのかも知れない。