カレー ジケンボ トウコウシュウ
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自分にとって料理の原点ともいえるできごと。それは・・・。
一人暮らしだった頃、カレーを作ろうと思った。
レトルト?いやいや。ルー?んー...もう一越え。
どうせ作るならアレからやろう。カレー粉から。アルミの打ちだしの鍋(ずん胴?)を購入し、気合いを入れる。
材料を購入。極々普通。
肉・野菜など材料を適宜切り、それぞれを火を通す真似事程度に
熱したフライパンの上を転がす。フライパンの上の物を鍋に移し、
水を張り火にかける。ここまでの手順とても適当。レシピがあるわけでも、おいしい作り方知っているわけでもない。
分量・切り方すべてなんとなく。適当。さて、ここからが問題。カレー粉はどうしたらいいんだろう。
なんか見聞きしたところによると、フライパンでカレー粉をあぶるみたいだ。
香りがたつのだろう。たぶん。
またカレー粉だけじゃなく小麦粉で辛さや分量の調節するみたいだ。
フライパンに入れてみる。
気の済む程度あぶったら、鍋に加えてみる。かき混ぜる。煮込む。ん〜、カレーの匂い。
しかし、・・・当然の事ながら、黄色い。カレー粉の色そのままだ。いままでルーから作る、ごくごく一般的な家庭の普通のカレーしか食べたことがない。
そんなヤツにとって、この単に黄色く水っぽい物体はカレーとはとても思えない。とりあえず煮込んで水分蒸発に試みる。
小麦粉やカレー粉等を足してみる。いろいろやる。・・・あきらめる。仕方がないので、牛乳でも加えて食ってしまおう。
--- 味のことは、もう数年も前のことで覚えてはいない。
いや、それだけのせいではないだろう。 ---果たして、どのくらい食べたのだろう。
というか何食分出来あがったのさえ覚えていない。とにかく少々残す。今回のカレー粉へのチャレンジは、自分にとって”失敗”と位置づけられた。
--- レ シ ピ は き ち ん と 確 認 し よ う 。 ---
残したものを鍋ごと流しへと置いて後で洗おう。
虚脱感と形容しがたい満腹感の中で、少しまどろむ。
翌日。・・・明日でいいか。
2日後。・・・後でやろう。
3日後。・・・一週間。
気が付けば鍋の中にカビが生えている。
自分は、まだ虚脱感の中にいた。さらに3日後、・・5日後、・・・一週間。
ますます旺盛。蓋を取れば一面カビだ。青、白、黒、色とりどり。
もう触わる気はしない。さらに一週間、・・二週間、・・三週間。
こうなると、観察日記だ。
カビも生きている。隣り合う他種のカビとの激しい生存競争があるようだ。
たまに水を流してごまかしてみる。胞子が飛ぶ。夏だねえ。一ヶ月、・・二ヶ月、・・三ヶ月。
ここまでくると、ヤケ。
そういえばここのところ、水道の蛇口から水を飲んでいない。蛇口に手すらかけない。
カレーのスパイスが効いているのか!?不思議と変な虫はわかない。季節が変わる。
4ヶ月を過ぎた頃になるとカビも生えきってしまったのか、
水面を覆う単なる黒く厚い膜になってるように見える。
悪戯心。
表面の膜を棒で避けてみるとあの黄色かった液体も無色透明に。
鍋底が見通せる。驚きだ。そろそろ冬になる。カビ・細菌も活動レベルを低下させただろう。
鍋・食器を洗い片づけることにする。
夏の "カレー実験簿" もこれで終わりにしよう。---
今では材料・レシピは調理前に必ず確認。料理器具は使用直後に処理してしまう。
思えば、 "一人暮らし" そのものが、全て実験だったのかな。
しかし・・・、このあとこの鍋を使うことも、カレー粉からカレーを作ることもなかった。
--- 腐海の樹木は汚れた土をきれいにしてるんだね。 ---
"T.Kosato" experience.